原始仏典:スッタニパータ(第1章2節)

原始仏典:スッタニパータ(第1章2節)について
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今の幸福の先に在ること 2016-07-16 11:23:51

たくさんの牛を飼う、ある信仰者は言いました。

「私は、今日もご飯の準備を整え、牛の乳搾りも終えました。
大きな河の側に、家族と一緒に住んでいます。

私が住む家の屋根は立派に葺(ふ)かれ、
内部には暖かい「火」が灯されています。
先祖を祭る献「火」も供物も絶やしません。

さあ神様、もし雨を降らせたいならば、いつでも降らして頂いて結構です」

(原始仏典 スッタニパータ 第1章2節-No.18)


釈尊は答えました。

「私は、怒る心から既に離れており、常に素直な心の状態にいます。

今日は大きな河の側で、一夜の一時しのぎの宿を借りるのみです。

私の心には、身を隠す屋根が既にありません。
ムラムラと湧き起こるワレヨシな欲望の「火」もありません。

さあ神様、もし雨を降らせたいならば、いつでも降らして頂いて結構です」

(原始仏典 スッタニパータ 第1章2節-No.19)

(感想)
この項で釈尊は、牛飼いのまじめな信仰者を否定しているのでは決してありません。
ただ、釈尊の教えの全て、仏教の根幹は一言で言いますと、
「何ごとにも執着するな」
なのです。

これを「だから何もしなくて良い」と誤解してはダメです。
* まじめに全力で働きなさい。何にでも最善を尽くしなさい。
* でも、その結果にこだわっては生けない。その結果・成果に執着しては生けない。
という意味なのです。

(中略)

要するに、この項で示されていますことは、
* まじめに働き、色々なモノを手にすることは良いことです。
  でも、それに執着しては生けない。
  誰もが、いつでも、一人裸でアノ世に行くからです。

* だから、ソレに執着せずに楽しんで、感謝をすることが大切なのです。


自分の幸福感に潜む盲点 2016-07-19 11:13:24

たくさんの牛を飼う、ある信仰者は言いました。

「私の妻は従順であり、何でも私の言うことを聞きます。

妻は、色々な欲望にふらつくこともありません。

私と長い年月を共に暮らし、ひたすら私を愛しており美しい女性です。

彼女の行動で、悪い噂を聞いたことがありません。

さあ神様、もし雨を降らせたいならば、いつでも降らして頂いて結構です」

(原始仏典 スッタニパータ 第1章2節-No.22)


釈尊は答えました。

「私の心は従順であり、どんな他人の言葉も聞きます。

私の心は、既にコノ世を解脱(げだつ:すべての執着から離れた完全に自由な心境)しております。

長い年月にわたる心の修行をしており、私の心は常に静かです。

私が今更、悪行をすることは有り得ません。

さあ神様、もし雨を降らせたいならば、いつでも降らして頂いて結構です」

(原始仏典 スッタニパータ 第1章2節-No.23)

(感想)
この項で大切な視点は、
* 今の自分の幸福や自信とは、他人の存在の御蔭で成り立つものか否か。
* 釈尊のように、自分自身の心に拠りどころを持つことが、コノ世での最終の答えであること。
この2点を知って置いてください。

このような視点を持って、社会で思いっ切り生きることが真の幸福への近道と成ります。
周囲に素直な人が居れば、その人への思いやりを余計に持って上げましょう。



たくさんの牛を飼う、ある信仰者は言いました。
「牛を飼うための柵(さく)の棒はしっかりと打ち込まれており、柵が壊れることはありません。
柵に張る縄(なわ)は、つる草でよく編み込まれており切れることがありません。
若い牛たちでも、この縄を切って逃げることは出来ません。
さあ神様、もし雨を降らせたいならば、いつでも降らして頂いて結構です」

(原始仏典 スッタニパータ 第1章2節-No.28)


釈尊は答えました。
「私は自分を囲う柵を牡牛のように壊し、
自分を縛る強固なつる草の縄を巨象のように引き千切ることでしょう。
そうして、私は二度と母体に宿ることが無くなります。
さあ神様、もし雨を降らせたいならば、いつでも降らして頂いて結構です」

(原始仏典 スッタニパータ 第1章2節-No.29)

(感想)
牛飼いの生活基盤や「誇るべき」自分の生きがいは、
* 囲う柵と、縛る縄 
により、もたらされています。

しかし、釈尊は柵(さく)も縄(なわ)も壊し引き千切ることにより、何も持たないが、その代わりに二度と生まれて来ることは無いとします。永遠に涅槃(ねはん:天国)に安住するわけです。

私たちは社会で生きる為に、
* 囲う柵=会社・組織など
* 縛る縄=家族・子供・異性など
を持ちます。そしてまた、これらが無いことが、自分の悩みと多くの人に成っています。

そして、この項の釈尊の真意は、
* 囲う柵も、縛る縄も持つな。と言っているのでは無いのです。
* 囲う柵を、縛る縄を持っても・持たなくても、それに執着するな。
ということなのです。

だからコノ世で大きな財産を築き、かけがえのない家族を持てたとしても、それに執着しない人は最高であり、死後も天国に行く。
コノ世の財産も地位も、家族も何も無い人も、その無いことに執着しなければ、その人は最高の天国に行く。
何もコノ世で持てなかった分、死後の天国の歓喜とはなおさらに大きなものと成ります。



「自分に無いモノにも執着しない」
とは、別の表現で言いますと、
「お任せの心境」
「サレンダー・surrender」
「神様に引き渡す、神様に明け渡す、降参する、神様に身を任せる」
という心境が近い意味です。

「自分に無いモノにも執着しない」とは、ただ無理にアキラメルのでは無くて、より高い心境からの「お任せ・自然」を意味します。

(中略)

結局は、今日の私が言いたかったことは、とにかく、

* 今の自分がしたいこと、欲しいもの、希望が有ればそれに向かって、思いっ切り努力してぶち当たれば良いのです。
* そして、その結果が出ようが、ダメだろうが、一切をお任せで楽しむこと。
なのです。

「自分に無いモノにも執着しない」とは、すべては生かされている上での悩みに過ぎず、
この言葉に収束・終息することを私は言いたい。それが、

生かして頂いて 有り難う御座います


悪魔のささやき 2016-07-29 11:48:10

牛を飼う信仰者と釈尊のこのような問答が終わるやいなや、天が返答するように物凄い大雨が降り始めました。
瞬く間に低い窪地も、小高い丘も暴雨で満たされるほどでした。
神様が大雨を降らされる様を見た牛飼いの信仰者は語り始めました。

「私が釈尊、貴方様に会えたことは物凄いことでした。心から衝撃を受けました。
貴方様は真の知恵の神眼をお持ちであることがよく分かりました。
私はあなたに帰依(きえ:教えに従うこと)します。

私の妻もとても従順で素直な人です。私と一緒に貴方様のような如来の元で共に学ばせてください。
何度も生死を繰り返す人の人生を今生で終わらせ、永遠の彼岸(ひがん:天国)に安住することを目指したく思います」

(原始仏典 スッタニパータ 第1章2節-No.30〜No.32)


このやり取りを見ていた悪魔は言いました。

「子供を持つ者は、子供を持つからこそ喜びが来る。
牛を持つ者は、牛を持つからこそ贅沢が出来る喜びが来る。
つまり所有物こそが人に喜びをもたらすことが出来る。
何も持たない人には、喜びは来ない」

(原始仏典 スッタニパータ 第1章2節-No.33)


これを見て釈尊は言いました。

「子供を持つ者は、子供に執着すれば、心配が絶えない苦しみが生じます。
牛を持つ者は、牛を持つことに執着すれば、色々と心配して悩みます。
つまり所有物こそは人に執着をおこさせて、いつまでも心を安心させることがありません。
何を持とうが持たなかろうが、何に対しても執着しない人には、苦悩は来ません」

(原始仏典 スッタニパータ 第1章2節-No.34)

(感想)
牛を飼う真面目な信仰者が、釈尊に感動して夫婦で釈尊の教えを勉強したいと言えば、悪魔が登場して来ました。
悪魔はいつでも、どこでも、聞き耳を立てているということです。

人の自我(じが:ワレヨシな欲望や思い)に住んでいるのが悪魔と言えます。
つまり誰もが、自分の心に悪魔と神様(真我・内在神)の両方を既に持った状態が人間だと言えます。
ここが大切なポイントです。

どこか知らない他所から、悪魔や神様がやって来るのでは無いのです。
既に自分の中に同居している訳です。
だから修行すると言いましても、何かが他所から来ることを期待してもムダです。
自分の中から、何を出すのか?
を意識することが大切なのです。


(追記)悪魔のささやき 2016-07-31 11:01:37

「ぼろを着ても心は錦」は大切で良い言葉なのですが、
* 他人への思いやりや、配慮、エチケットは忘れては生けない。
* 自分だけの独善、独り善がりでは生けない。
ということを思います。

そうなりますと、
* 安物を着ていても、清潔な服ならば、その人の心は錦。
は本当に言えることだと思います。

(中略)

この項では、悪魔は牛飼いの信仰者に対し、
* 物を持つこと。物を集めることこそが人を幸福にする。
と言い、釈尊は、
* 物を持とうが持たなかろうが、それに執着しないことが、真に心を幸福にする。
と示されました。

服の話も含めて、すべてに共通する真理は、
* 他人への思いやりが一番に大切。
であり、これが本当に悟るためには不可欠な要素だと言えます。


【掲載順序】本ページは「日付昇順」とします。



  • 最終更新:2020-06-11 19:42:04

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